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相続税における債務控除の基礎知識と適用範囲について解説!

相続が発生すると、相続人や包括受遺者は被相続人の財産だけでなく、債務(借金や未払いの税金など)も引き継ぐ義務があります。

相続税は、財産の総額(プラスの財産)から債務や葬式費用などを差し引いた「正味財産額」に対して課税されます。

そのため、被相続人が残した債務を適切に控除することで、相続税を正しく計算することが重要です。

この債務を差し引く仕組みを「債務控除」といいます。

本記事では、債務控除の対象者、控除できる債務の種類、注意点などを詳しく解説していきます。相続税の計算をする際に、ぜひ参考にしてください!

目次

対象者は相続人・包括受遺者のみ!

債務控除の対象者は相続人と包括受遺者のみです。

相続人と包括受遺者は民法上、被相続人の債務を承継する必要があるため、相続税計算においても、債務控除が認められています。

特定の財産だけ遺言書により取得した受遺者は、債務を承継する義務がないので、債務控除を受けることができません。

■補足 負担付遺贈の場合には控除OK

一定の負担を条件に財産を遺贈する負担付遺贈の場合には、その財産の相続税評価額の計算上、その負担に相当する金額を差し引くことができます。

負担付遺贈でよくあるケースは不動産とその不動産に対する借入金を遺言により遺贈するケースです。

この場合、不動産の相続税評価額の計算上、借入金の残額を差し引くため、債務控除と同一の効果があります。

対象となる債務の具体例

控除できる債務について、相続税法では『被相続人の債務で相続開始の際に現に存するもの』と規定されています。

具体的には↓のような債務が控除できます。

控除できる債務の具体例
  1. 税金関係
  2. 医療費
  3. 借入金
  4. その他生活費
  5. 葬式費用

以下、詳細を説明します。

税金関係

被相続人が払うべきであった税金は控除することができます。

固定資産税

相続開始後に支払った固定資産税は債務控除の対象となります。

固定資産税は1月1日に不動産を所有していた場合に課税されます。

納付は4月以降の年4回払いとなっているため、納付が完了しない状態で相続が発生するケースが多いのでかならずチェックしましょう。

住民税

相続開始後に納付した住民税は債務控除の対象となります。

住民税は前年の所得に対して翌年の6月以降に年4回払いの納付書が届きます。

固定資産税と同様、納付が完了していない状態で相続が発生するケースが多いのでチェックしましょう。

所得税や消費税

個人で事業を行っている人や不動産収入がある人の場合、相続開始後に所得税や消費税を払った場合には控除できます。

なお、相続開始した年の確定申告は亡くなった後4ヶ月以内に申告する必要があります(準確定申告)。この準確定申告にかかる所得税も債務控除の対象です。

父は不動産を貸していたのですが、過去の分、確定申告を行っていませんでした、、、。過去の分の納税は債務控除の対象になりますか?

過去の分の納税も債務控除対象になります。

まずは過去の確定申告書を作成して所得税の納税をすませましょう。このときの所得税や申告後に送付される住民税は債務控除の対象となります。

また、延滞税や加算税についても債務控除の対象です。

ただし、延滞税については、相続発生時までの日割り計算分が債務控除の対象となります。

医療費

相続開始後に支払った医療費については債務控除の対象となります。

亡くなる前に支払っていたものは相続開始前に支払っているので対象外です。

なお、生前に支払った医療費を相続人が立て替えていた場合には相続人に対する債務として控除が可能です。

立て替えていた場合には領収書などの資料を残しておきましょう。

借入金

借入金がある場合、債務控除の対象になります。

銀行借入の場合には残高証明書などで金額を確認しましょう。

個人間の私的な借入金についても債務控除の対象です。金銭消費貸借契約書などで金額を確認しましょう。

なお、借入金の保証人になっている場合、保証人になっている状態だけでは債務控除の対象になりません。

主たる債務者が弁済不能、被相続人が弁済しなければならない、求償権を行使できない、という状況の場合には控除可能です。

連帯債務の場合には被相続人が負担すべき部分のみ控除することができます。

その他生活費

相続開始した月の水道光熱費やクレジットカードの支払いなど、相続人が相続開始後に精算した支払いは債務控除の対象となります。

ただし、あくまでも対象となるのは相続開始時点までの利用分です。

相続開始後の電気代などは債務控除の対象外なので気をつけましょう。

葬式費用

葬式費用については本来、被相続人の債務ではありませんが、相続の発生にともない必ず発生するものなので、例外的に一部、債務控除の対象となっています。

対象になるものとならないものは↓の表のとおりです。

対象になるもの対象にならないもの
本葬式費用、仮葬式費用、通夜費用、納骨費用
お寺へのお布施
会場借り上げ費用
お通夜のときの飲食代
遺体運搬費用
四十九日など法会に要する費用
香典返しにかかる費用
墓地購入、整備にかかる費用
遺体解剖費用

制限納税義務者の場合の注意点

制限納税義務者の場合には日本国内の財産にだけ相続税がかかることから、対象となる債務はその国内財産にかかる債務のみとなります。

制限納税義務者ってなんですか??

相続税の納税義務者には以下の2つの区分があります。

  • 無制限納税義務者…全世界の財産に相続税がかかる人
  • 制限納税義務者 …日本国内の財産にだけ相続税がかかる人(海外の財産には相続税がかからない)

シンプルに説明すると被相続人と相続人の両者が外国籍の場合には制限納税義務者となります。

制限納税義務者は国内の財産以外にかかる債務や葬式費用は控除することができないので注意しましょう。

なお、制限納税義務者の詳細については↓の記事で解説しています。

まとめ

今回は相続税における『債務控除』についてお話しました。

相続人と包括受遺者は被相続人の債務について相続税の課税価格から差し引くことができます。

特定の財産だけ取得する受遺者は債務控除の対象外となりますので気をつけましょう。

債務控除の対象となるものは↓の表のとおりです。

控除できる債務の具体例
  1. 税金関係
  2. 医療費
  3. 借入金
  4. その他生活費
  5. 葬式費用

制限納税義務者については、取得した日本国内の財産にかかる債務のみ控除の対象となります。

財産以外の債務や葬式費用は控除できませんので気をつけましょう。

債務控除をしっかり理解して正しい相続税額を計算しましょう。


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この記事を書いた人

相続税対策・不動産税務に強い税理士です。

『お客様一人ひとりにオーダーメイドのサービスを』を理念とし、サービス提供にあたってお客様との対話を最も重視しています。

神奈川県三浦市出身。1984年生まれ。

追浜高校→明治学院大学→同大学院→
税理士法人レガシィ2年半
→響き税理士法人11年

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