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会計検査院が指摘した非上場株式評価の現状と課題

令和6年11月6日、会計検査院より令和5年度決算検査報告が行われました。

その中で取引相場のない株式の評価について「現行の評価方法では公平性を確保できていないのではないか」との指摘がされました。

この指摘は将来の相続税・贈与税の増税にもつながりかねない指摘であり重要な指摘と考えています。

今回は令和5年度の決算検査報告で指摘された事項の一部を整理してお話します。

■会計検査院 令和5年度決算検査報告の特徴的な案件
https://www.jbaudit.go.jp/report/new/tokutyou05.html

目次

会計検査院とは

会計検査院は、日本の行政機関の一つで、国の財政の適正性や効率性を監査する役割を担っています。

主に、国の予算が適切に使用されているか、無駄遣いや不正な支出がないかを検査し、必要に応じて改善を勧告します。

税制も国の予算に関わる重要な制度であり、税制が適切に機能しているかを指摘することも会計検査院の役割のひとつです。

取引相場のない株式の評価

今回、会計検査院にて取引相場のない株式の評価方法について指摘を受けました。

上場していない株式には取引相場がないため、どのように評価すべきかが課題です。

取引相場のない株式とはどのように評価するのでしょうか。以下、説明します。

評価方法

取引相場のない株式の評価については、財産評価基本通達で評価方法が定められています。

評価対象会社の規模は上場企業並みの会社から個人企業並みの会社までさまざまなため、規模に応じた異なる評価方法が通達で定められています。

具体的な評価方法は次の3つです。

  1. 類似業種比準方式:同業種の上場企業の株価を基準に評価する方法。
  2. 純資産価額方式:評価会社の純資産価額に基づき評価する方法。
  3. 併用方式:類似業種比準価額と純資産価額を併用して評価する方法。

評価会社の規模が大きい場合は上場企業に近いため「類似業種比準方式」を、小規模の場合は「純資産価額方式」を用いる考え方が一般的です。

大会社と小会社の中間の中会社については、両方の方式を併用します。

会計検査院からの指摘事項

令和5年度決算検査報告にて取引相場のない株式について調査を行ったうえで計算方法について指摘をしました。

検査の対象と方法

令和2年・令和3年の相続税および贈与税の申告のうち、取引相場のない株式が含まれる申告リストから1,600件を無作為に抽出し、評価状況を検査しました。

評価の実態

取引相場のない株式の評価は、評価会社の規模区分に応じて異なる評価方式が選択可能です。


↓図表4に示される通り、大会社98社のうち92社(93.8%)が「類似業種比準方式」により評価され、中会社372社のうち345社(92.7%)、小会社170社のうち153社(90.0%)は「併用方式」により評価されていました。
一方、純資産価額方式による評価はどの規模区分でも少数でした。

ともの

⇒納税者は通常、納税額を低く抑えたい意向があるため、評価額が低くなりやすい方法を選択します。

一般的に、純資産価額方式と比較して、類似業種比準方式や併用方式の評価額は低くなる傾向があるため、この選択結果はある程度予想通りです。

類似業種比準価額と純資産価額の比較

上記の結果から会計検査院は次のような仮説をたて、その仮説を検証するために調査を行いました。

会計検査院の仮説

類似業種比準方式や併用方式で計算されるケースが多いということは、取引相場のない株式の評価額が低くなり過ぎているのではないか?

サンプルの評価会社における類似業種比準価額と純資産価額の比較をおこなった結果、類似業種比準価額の中央値は11,622円、純資産価額の中央値は42,648円であり、類似業種比準価額が純資産価額の27.2%にとどまっていることがわかりました。

また、評価会社の規模別に純資産価額に対する申告評価額の割合を調査したところ、以下の結果が得られました。

  • 大会社:0.32倍
  • 中会社:0.50倍
  • 小会社:0.61倍

規模が大きいほど申告評価額が純資産価額に比べ低くなる傾向が確認されました。

ともの

類似業種比準価額は純資産にくらべて低い評価額になることは想定していましたが、今回、会計検査院の調査により、どのくらいかい離があるのか明らかにされました。

多額の純資産を有する会社であればあるほど、株価評価全体への影響が大きく、将来の相続税などに影響を与えます。
今後の動向に注視が必要です。

会計検査院の指摘

会計検査院は、「類似業種比準方式が純資産価額方式に比べて相当程度低く算定されており、各評価方式の間で評価額に著しいかい離が生じている。また、評価会社の規模が大きい区分ほど純資産価額に対して低く評価される傾向にある」と指摘しました。

これは異なる規模区分の評価会社が発行した取引相場のない株式の取得者間で公平性が確保されていないと考えられます。

会計検査院は、国税庁に対して取引相場のない株式の評価制度について再検討を求めて報告を締めくくっています。

類似業種比準価額の指摘のほか、配当還元方式の評価方法についても指摘をしていましたが、今回の記事では説明を割愛しています。

まとめ

今回、取引相場のない株式の評価に対する会計検査院の指摘についてお話しました。

現行の評価方法では、類似業種比準方式が純資産方式よりも低く評価される傾向が統計的に確認され、異なる規模区分の評価会社が発行した株式の公平性が確保できていない可能性があるとの指摘がされています。

会計検査院の指摘がすべて反映されるわけではありませんが、一定の影響があることは否めません。
今後の動向にも注目が必要です。


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この記事を書いた人

相続税対策・不動産税務に強い税理士です。

『お客様一人ひとりにオーダーメイドのサービスを』を理念とし、サービス提供にあたってお客様との対話を最も重視しています。

神奈川県三浦市出身。1984年生まれ。

追浜高校→明治学院大学→同大学院→
税理士法人レガシィ2年半
→響き税理士法人11年

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