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賃貸アパートの敷地は減額できる!貸付事業用宅地等について解説!

相続税には小規模宅地等の特例という制度があり、一定の要件を満たす土地については土地の評価が減額されます。

賃貸アパートなどに使っている土地(貸付事業用宅地等と呼びます)についてはこの小規模宅地等の特例の適用ができます。

今回は賃貸アパートの敷地に適用することができる貸付事業用宅地等についてお話していきます。

目次

減額できる金額はどのくらい?

減額割合

貸付事業用宅地等については評価額を50%減額することができます。

限度面積

小規模宅地等の特例は適用面積の限度が定められています。これを限度面積といいます。

貸付事業用宅地等の場合には200㎡が限度面積です。

例えば240㎡の土地の場合には200㎡部分が50%減額され、40㎡部分はそのままの100%評価となります。

補足 実務上の計算の留意点

小規模宅地等の特例には、他にも特定居住用宅地等や特定事業用宅地等などの種類があります。

それぞれの減額割合と限度面積は下記のとおりです。

名称減額される割合限度面積
貸付事業用
宅地等
50%200㎡
特定居住用
宅地等
80%330㎡
特定事業用
宅地等
80%400㎡
特定同族会社
事業用宅地等
80%400㎡

これらの種類をすべて受けられるわけではなく、下記の算式で計算した面積を200㎡以下にする必要があります。
(貸付事業用宅地等を選択する場合の算式となります)

①貸付事業用宅地等
②特定居住用宅地等の面積×200/330
③(特定事業用宅地等の面積+特定同族会社事業用宅地等の面積)×200/400

①+②+③を200㎡以下にする

それぞれの土地の㎡単価×減額割合を計算し、高いものから優先して適用していくとトータルの減額金額が大きくなります。

実務上はそれぞれの土地を減額単価を検討し、どの土地から優先して適用を受けるか検討をすることとなります。

この小規模宅地等の特例の選択については、一度決めて申告をしてしまうと変更することができませんので、慎重に検討する必要があります。

適用要件は?

貸付事業用宅地等に該当するためには以下の要件を満たす必要があります。内容について一つずつみていきます。

貸付事業用宅地等の適用要件
  1. 土地を相続または遺贈でもらうこと
  2. 申告期限までの継続要件
  3. 相続開始前3年以内に事業開始はNG
  4. 申告期限までに遺産分割が確定していないとNG

土地を相続または遺贈でもらうこと

適用を受けるためには相続や遺贈で取得する必要があります。生前贈与でもらった場合には適用NGです。

土地の贈与を受け、相続時精算課税制度で贈与税申告をした場合、土地の評価額は相続時の財産に加算されますが、小規模宅地等の特例を使うことができませんので気をつけましょう。

申告期限までの継続要件

相続開始時点で行っていた貸付事業を相続税の申告期限(相続開始後10ヶ月後)まで継続する必要があります。

相続後、途中でやめてしまった場合には適用NGとなります。

また、申告期限までの所有の継続も求められます。途中で売却をしてしまうと適用NGですので気をつけましょう。

相続開始前3年以内に事業開始はNG

相続開始の直前3年以内に新たに貸付事業を始めた場合、その貸付事業にかかる土地については適用NGとなります。

ただし、事業的規模であれば相続開始の直前3年以内の事業開始でもOKです。

事業的規模とは所得税法基本通達に規定されている、いわゆる『5棟10室基準』と呼ばれるものです。

所得税法基本通達26-9(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)

  1. 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
  2. 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

貸付事業を開始した時期と貸付事業規模には気をつけましょう。

申告期限までに遺産分割が確定していないとNG

申告期限までに小規模宅地等の特例の適用を受ける土地について遺産分割が確定している必要があります。

遺産分割でモメてしまい申告期限まで遺産分割協議書が作成できない場合には適用を受けることができないので気をつけましょう。

ただし、申告期限後、遺産分割が確定したときには小規模宅地等の特例を使うことができます。

そのためには最初に提出する相続税の申告書に『申告期限後3年以内の分割見込書』を提出することが必要です。

これを忘れると特例が使えませんので注意しましょう。

国税庁HP 申告期限後3年以内の分割見込書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/pdf/2327.pdf

記載例などの注意点は↓の記事で詳細解説しています。

申告時に添付が必要な書類とは?

貸付事業用宅地等を適用するときには相続税の申告書に以下の書類の添付が必要です。
なお、いずれも原本の提出は不要なのでコピーでOKです。

申告書に添付が必要な書類
  1. 遺産分割協議書または遺言書
  2. 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議をした場合)
  3. 確定申告書・賃貸借契約書等(相続開始の直前3年以内に新たに貸付事業を始めた場合)

遺産分割協議書または遺言書

遺産分割が確定していることを証明する書類として遺産分割協議書や遺言書の提出が必要です。

提出は原本ではなく、コピーで問題ありません。

相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議をした場合)

遺産分割協議書に押印した相続人の印鑑証明書の提出が必要です。こちらも原本ではなくコピーでOKです。

また、発行後〇〇ヶ月以内などの期限もありません。相続手続きなどで印鑑証明書を取得したら1部コピーをとっておき税務署提出用に使いましょう。

なお、遺言書の場合には遺産分割協議にて実印を押す機会がないので、印鑑証明書の提出は不要です。

確定申告書や賃貸借契約書等(相続開始の直前3年以内に新たに貸付事業を始めた場合)

相続開始の直前3年以内に新たに貸付事業を始めた場合には、事業的規模で貸付事業を行っていないと特例を受けることができません。

事業的規模で貸付事業を行っていることを説明する書類として確定申告書や賃貸借契約書を提出する必要があります。

まとめ

貸付事業用宅地等についてお話しました。

相続税の小規模宅地等の特例により、一定の要件を満たす土地は評価額が減額されます。

賃貸アパートなどの貸付事業用宅地等は評価額が50%減額され、限度面積は200㎡です。

貸付事業用宅地等の適用を受けるためには↓の要件を満たす必要があります。

貸付事業用宅地等の適用要件
  1. 土地を相続または遺贈でもらうこと
  2. 申告期限までの継続要件
  3. 相続開始前3年以内に事業開始はNG
  4. 申告期限までに遺産分割が確定していないとNG

申告時には遺産分割協議書や確定申告書などの↓の書類の提出が必要です。

申告書に添付が必要な書類
  1. 遺産分割協議書または遺言書
  2. 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議をした場合)
  3. 確定申告書・賃貸借契約書等(相続開始の直前3年以内に新たに貸付事業を始めた場合)

賃貸アパートを所有している場合には貸付事業用宅地等の適用の検討を忘れないようにしましょう。


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この記事を書いた人

相続税対策・不動産税務に強い税理士です。

『お客様一人ひとりにオーダーメイドのサービスを』を理念とし、サービス提供にあたってお客様との対話を最も重視しています。

神奈川県三浦市出身。1984年生まれ。

追浜高校→明治学院大学→同大学院→
税理士法人レガシィ2年半
→響き税理士法人11年

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