相続が発生すると相続人間での遺産分割協議が必要になります。
ただし、相続人に未成年者がいる場合には遺産分割協議をすぐに始めることができません。
遺産分割協議は始めるためには家庭裁判所への特別代理人の選任手続きが必要になります。
今回は相続人に未成年者がいる場合の遺産分割までの流れについて解説します。
流れは↓のとおりです。
- まずは財産を把握する
- 未成年者の代理人(特別代理人)を誰にするか検討する
- 遺産分割について下話をする(遺産分割協議案を作成する)
- 特別代理人の選任手続きの申し立てをすすめる
- 遺産分割協議書に署名・捺印する
未成年者とは18歳以下の者
2022年の民法改正により18歳の誕生日に成年に達することになりました。
つまり、17歳までが未成年ということになります。
まずは財産を把握する
未成年者との遺産分割協議をおこなうためには被相続人の財産を把握、整理することが必要です。
どのような財産がどのくらいあるか、財産目録を作成しましょう。
どこになんの財産を持っているかわからないんです、、、。
↑という人は財産の所在を調べる手続きを進めましょう。
すべての財産を調べることはできませんが大部分は調べることができます。
財産の所在をしらべる手段については以下の記事で詳細を解説しています。
未成年者の代理人(特別代理人)を誰にするか検討する
未成年者は法律行為ができない!
財産の整理ができたら遺産分割協議を進めます。
ただし、未成年者、本人との協議はできません。未成年者の代理人(特別代理人)との協議が必要になります。
なぜ代理人が必要なのでしょうか?
未成年者には単独での法律行為が認められていないからです。民法第5条では以下のように規定されてます。
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない
民法第5条
遺産分割協議も法律行為のひとつになるため、単独で協議に参加することができません。
特別代理人を選任する必要あり!
親権者である親が一緒に遺産分割協議すればいいのでは?親(法定代理人)が同意していてもダメなのでしょうか?
⇒NGです!
親権者(親)と未成年者はどちらも相続人となるため、利害が対立します。(これを利益相反行為といいます)
そのため、親権者(親)が未成年者と遺産分割協議をおこなうことは民法上、認められません。
遺産分割協議を行うために家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
なお、未成年者ひとりにつき、ひとりの特別代理人が必要になります。
だれがなれるの?
特別代理人には特に要件がなく、だれでもOKです。ただし、未成年者の親など、遺産分割について利害が対立する人はNGとなります。
実務的には利害関係がない祖父母や叔父叔母などの親族がなることが多いです。
遺産分割について下話をする
手続きには遺産分割協議書案が必要
特別代理人をだれにするか決まったら、次は遺産分割について下話をしましょう。
裁判所に特別代理人の選任の手続きを行うときには遺産分割協議案の提出が求められます。
手続前に遺産分割について方向性を決めておく必要があります。
原則として法定相続分での遺産分割が求められる
家庭裁判所からは原則として法定相続分での遺産分割を求められます。
家庭裁判所としては未成年者である子の利益を保護することを優先するためです。
未成年者の相続分が法定相続分以下になる場合には理由を記載する必要があります。
相続税の税額控除を受けるためには
未成年者が相続で財産をもらった場合には未成年者控除という税額控除が適用されます。
この税額控除の適用を受けるためには未成年者が相続で財産をもらう必要があります。
未成年者が財産をもらわない場合には適用が受けられませんので遺産分割の際には未成年者控除を意識して協議を進める必要があります。
特別代理人の選任手続きの申し立てをすすめる
遺産分割協議書案が作成できたら特別代理人の選任の申し立て手続きを進めましょう。
選任手続きをする場所
子の住所地の家庭裁判所に選任手続きの申立書を提出します。
裁判所の管轄は↓から調べることができます。
申立書も裁判所のホームページからダウンロードできます。
申立てに必要な書類
その他申立てに必要な書類は↓のとおりです。
- 未成年者の戸籍謄本
- 親権者の戸籍謄本
- 特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 遺産分割協議書案
手続きから選任までの期間は約1ヶ月
特別代理人の選任手続きから完了までは約1ヶ月程度かかります。
相続税の申告期限に間に合うようになるべく早めに進めていく必要があるでしょう。
選任手続きが終わったら遺産分割協議書に署名・捺印する
特別代理人の選任の手続きが完了したら、選任された特別代理人は未成年者に代わって遺産分割協議書に署名・捺印をします。
代理人申立て時の提出した事項の処理が完了すれば特別代理人の任期も完了します。
まとめ
今回は相続人に未成年者がいる場合の遺産分割までの流れについて解説しました。
流れをおさらいすると↓のとおりです。
- まずは財産を把握する
- 未成年者の代理人(特別代理人)を誰にするか検討する
- 遺産分割について下話をする(遺産分割協議案を作成する)
- 特別代理人の選任手続きの申し立てをすすめる
- 遺産分割協議書に署名・捺印する
通常の遺産分割とくらべ申請手続き等に時間がかかります。相続税の申告期限(相続発生後10ヶ月)に間に合うように、早め早めに行動しましょう。
万が一申告期限に間に合わない場合には、一旦未分割での申告を検討しましょう。申告期限までに遺産分割が間に合わない場合の注意点はこちらの記事で詳細解説しています。