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不動産収入の税負担を減らす!資産管理会社の仕組みとポイント

不動産を所有していると、所得税や相続税の負担が気になりますよね。

特に、不動産所得が大きくなると所得税率が高くなり税負担が重くのしかかります…。

そこで検討したいのが、「資産管理会社」の設立です。

不動産収入を会社に移すことで、税負担を軽減し、資産を効率的に管理することが可能になります。

しかし、資産管理会社にはメリットだけでなく、デメリットや注意点もあります。

本記事では、

  • 資産管理会社をつくる流れ
  • 資産管理会社を設立するメリットとデメリット
  • 会社に資産を移転する際のポイント

などを分かりやすく解説します。

「節税対策として資産管理会社を作るべきか?」

この疑問を解決するために、ぜひ最後までお読みください!

目次

資産管理会社の設立を検討すべき人

↓に当てはまる人は資産管理会社を検討すべきです。

  • 所得税の課税所得が大きい
  • 建物の減価償却がおわっている
  • 不動産に対する借入金がない

以下、内容についてみていきましょう。

所得税の課税所得が大きい

所得税は超過累進税率のため、所得が大きくなるほど税率が上がります。

課税される所得金額税率
1,000円 から 1,949,000円まで5%
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%
40,000,000円 以上45%

不動産所得が大きい人や、給与所得などの他の所得と合算して税率が高くなっている人は、資産管理会社を設立して所得を分散することで節税メリットが得られます。

建物の減価償却がおわっている

耐用年数が経過すると建物の減価償却はゼロになります。

減価償却がゼロになると、不動産所得の金額が大きくなり、それにともない所得税の金額も増加します。

建物の減価償却がおわっている場合には資産管理会社へ建物を移転することを検討すべきです。

不動産に対する借入金がない

資産管理会社に不動産の名義を移転するには、その不動産に借入金がないことが前提です。

借入金が残っている場合、金融機関の承諾が必要になり、移転が難しくなります。

資産管理会社をつくることのデメリット

資産管理会社をつくることはいいことばかりではありません。

デメリットもあるので注意が必要です。

  • 社会保険の加入義務
  • 土地の評価額はあがる
  • 会社の財産にも相続税がかかる
  • 移転時に費用がかかる(譲渡所得税、登録免許税、不動産取得税など)
  • 消費税

以下、ひとつづつみていきましょう。

社会保険の加入義務

会社を設立して自分や家族に役員報酬や給与を支払うと、社会保険の加入が必要になります。

社会保険は健康保険が約12%、厚生年金が約18%の合計30%となり、会社と個人で折半して負担します。

国民健康保険よりも負担が増える可能性があるため、設立の際には注意が必要です。

土地の評価額はあがる

建物のみ資産管理会社に移転すると、個人の土地の評価額が上がる可能性があります。

なぜか?移転前の評価方法と移転後の評価方法を検証しながら説明します。

移転前:貸家建付地として評価

➡ 移転前は自分の土地に自分の貸家建物があるため、貸家建付地として評価します。

貸家建付地は(自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)で計算します。

借地権割合のエリアごとに貸家建付地の評価割合を計算すると↓の表のとおりです。
(借家権割合は30%、賃貸割合は100%と仮定して計算しています)

借地権割合エリア区分貸家建付地
A 90%73%
B 80%76%
C 70%79%
D 60%82%
E 50%85%

移転後:自用地評価×80%で評価

移転後は、自分の土地の上に会社の建物が建っており、土地を貸し付けているため、貸宅地として評価します。

貸宅地の場合、通常、自用地評価 × (1 – 借地権割合)で評価しますが、個人と会社の賃貸借契約では借地権が移転しないと考えられるため、自用地評価 × 80% で評価します。(詳細は後ほど説明します)

貸家建付地の評価割合と比較すると↓の表のとおり、借地権割合のエリアA、B、Cについては移転前よりも評価額があがることとなります。

借地権割合エリア区分貸家建付地自用地評価×80%との比較
A 90%73%+7%
B 80%76%+4%
C 70%79%+1%
D 60%82%△2%
E 50%85%△5%

会社の財産にも相続税がかかる

資産管理会社に収入を移転すると、会社に財産が蓄積されます。

会社の財産は株主の財産として相続税の課税対象となります。

会社の財産が蓄積しないような工夫や、株主構成の工夫が必要です。

移転時に費用がかかる(譲渡所得税、登録免許税、不動産取得税)

資産を会社に移転すると、以下の税金が発生します。

  1. 譲渡所得税(個人側)
    個人が資産を売却する際にかかる税金
  2. 登録免許税・不動産取得税(会社側)
    会社が建物を取得する際にかかる税金

移転時に発生する税金を試算した上で、実行するか判断する必要があります。

消費税にも気をつける

個人で消費税を納税している場合には、移転にあたり、消費税にも気をつけましょう。

建物を売却することで得た収入は課税売上となり、消費税の納税が必要です。

会社をつくる流れ

資産管理会社をつくるときの流れや注意点をみていきましょう。

会社をつくる

まずは会社をつくる必要があります。

会社をつくるときには↓の項目を決めて、公証人役場や法務局に行く必要があります。

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 事業目的
  • 資本金
  • 株主(出資者)
  • 役員
  • 決算期

手続きについてよくわからない場合には専門士業である行政書士や司法書士に相談しましょう。

会社の株主をだれにするか

会社の財産は株主のものと考えます。

相続税対策を念頭に会社を作る場合には、親ではなく、子どもが設立したほうが好ましいです。

会社の運営資金に回すお金がない場合には親から一時的に借りて運営することになります。

この親から借りたお金は、親からすると貸付金。相続税の対象となってしまうので気をつけましょう。

建物を会社に売却する

会社をつくったら建物を会社に売却しましょう。

名義が会社にかわることで、不動産収入が会社に帰属します。

不動産賃貸業の収入は建物の所有者にひもづくため、建物の名義が変更することで収入を個人から会社に移転することができます。

建物はいくらで売却すればよいのですか?

税務上は時価での売却をもとめられます。

ただし、建物については、時価がいくらか、、、相場がないので判断がむずかしいです。

帳簿価額と固定資産税評価額をもとに総合的に勘案するのがよいでしょう。

役員報酬や給与で所得分散する

会社の口座にたまった不動産収入を、役員報酬や給与として支払うことで所得を分散できます。

ただし、役員報酬や給与は会社の業務に携わっている人にしか支払えないため、注意が必要です。

※過大な役員報酬や給与は税務上、経費(損金)と認められない可能性があるので気をつけましょう。

土地は移さないほうがいい

土地の名義はうつさないのですか?個人のままですか?

土地の名義は個人のままにしたほうが好ましいです。

アパートなどの不動産賃貸業の収入は建物にひもづくため、土地の所有者は関係ありません。

そのため、土地は移さず、建物だけを移転すれば問題ありません。

土地は低額で貸し付ける

建物を会社に移し、土地が個人名義のままになると、個人の土地のうえに会社の建物が存在する、ということになります。

このときに、会社から個人に土地の使用料(地代)を支払いましょう。

地代の金額は固定資産税の2倍から3倍くらいにしておくと好ましいです。

個人から見ると、会社に土地を貸し付けていることになるので、貸宅地の評価により土地の相続税評価額を下げることができます。

ただし、権利金の支払いなどを伴う通常の土地の賃貸借契約ではないので、通常の貸宅地の評価ではなく自用地評価 × 80% で評価します。

無償返還の届出書

個人と会社で土地の賃貸借契約を締結したあとは土地の無償返還に関する届出書を提出する必要があります。

通常の土地の賃貸借契約とは違い、土地を無償で返還する=借地権を移転しないということを意思表示するために提出します。

この届出書を提出することで借地権の移転がなかったものとすることができます。

提出しない場合、原則として借地権が会社に移転したものと考え、この借地権の移転に税金が発生してしまいます。

■国税庁HP 土地の無償返還に関する届出
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_48.htm

まとめ

今回は資産管理会社についてお話しました。

不動産を所有していると、所得税や相続税の負担が大きくなるため、資産管理会社の設立を検討することで節税が可能です。

資産管理会社を設立するメリット
  • 所得分散による節税 → 法人の税率は個人より低く抑えられる
  • 減価償却終了後の対策 → 建物を会社へ移転し、税負担を軽減
  • 借入金がない場合に有効 → 不動産をスムーズに移転可能
デメリット・注意点
  • 社会保険の加入義務 → 会社設立により社会保険負担が増える
  • 移転時の税コスト → 譲渡所得税、登録免許税、不動産取得税が発生
  • 土地の評価額上昇 → 建物のみ移転すると個人の土地評価額が上がる可能性
設立の流れ
  1. 会社を設立 → 商号、事業目的、資本金、役員を決定
  2. 建物を会社へ売却 → 不動産収入を法人へ移す
  3. 役員報酬で所得分散 → 節税のため適切に分配
  4. 土地は個人名義のまま → 会社へ低額で貸し付け、相続税対策

資産管理会社の設立は所得が高い人や減価償却が終了した物件を所有する人にとって有効な節税策です。

ただし、社会保険負担や移転時のコストも考慮する必要があるため、トータルでメリットがでるかどうかは慎重に検討する必要があるでしょう。

お困りの際にはぜひご相談ください。


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この記事を書いた人

相続税対策・不動産税務に強い税理士です。

『お客様一人ひとりにオーダーメイドのサービスを』を理念とし、サービス提供にあたってお客様との対話を最も重視しています。

神奈川県三浦市出身。1984年生まれ。

追浜高校→明治学院大学→同大学院→
税理士法人レガシィ2年半
→響き税理士法人11年

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