自宅を売却するときには税務上、様々な優遇措置がもうけられています。
優遇措置をうけるためには確定申告が必要となり、申告のときには『自宅』であったことを説明する必要があります。
(住んでいなかった家や賃貸にだしていた家に優遇措置は認められません。)
住所を証明する書類として一番ポピュラーな住民票。自宅であることの説明方法として一番分かりやすいのは住民票です。
税務上もこれを見せれば『自宅』であることを証明することができます。
(現在はマイナンバーを記載して申告することになっていますので、住民票の提出も不要となっています)
でも、色々な事情があり実際に住んでいるところと住民票の住所が違う場合はどうすればよいでしょうか。
今回は住民票以外で『自宅』であることを説明する方法についてお話していきます。
住民票以外で『自宅』であることを説明する方法
- ライフラインの使用量の資料
- 届いた郵送物
- 医療費の領収書
- 通勤、通学定期
住民票とは
『自宅』を説明する書類として一番ポピュラーである住民票。
住民票とは住民基本台帳法に基づき作成される住民に関する記録です。
市区町村は常に住民票を正確な記録が行われるよう努めなければいけませんし
住民は、常に住所や世帯の変更等の届出を正確に行うことが責務とされています。
そのため、住所や世帯等に変更があった場合には変更してから14日以内に届出を行うこととされています。
また、虚偽の届出等、住民票の正確な記録を阻害するような行為をしてはならないともされています。
虚偽の届出等をすると住民基本台帳法にもとづき5万円以下の過料が科せられる可能性もあるようです。
税務上、住民票は関係ない!生活の拠点はどこか?
住民基本台帳法という法律にもとづいて作成された住民票。
実際には住民票の住所と実際の居住地が異なっているケースもあるかと思います。
税務署も基本的には住民票に記載されている住所を信用しますが、住民票だけでは判断しません。
税務署は『形式だけ』を嫌います。実態として生活の拠点として利用している家屋を自宅と判断します。
自宅に該当するかどうかは、以下↓の事情を総合的に勘案して判断します。
- 自分や家族の日常生活の状況
- その家屋への入居目的
- その家屋の構造及び設備の状況
東京と青森に不動産を所有している方が東京の不動産を売却した、という事例を3つのケースに分けて説明します。
ケース1 住民票は東京 実態も東京…OK
住民票と実態の住所が一致しているケース。
ほとんどの方はこのケースだと思います。
当然、この場合は問題なく適用OKです。
申告のときに説明資料は不要です。
マイナンバーを記載して申告書を提出すれば住民票も提出不要です。
ケース2 住民票は青森。だけど実態は東京…説明できればOK
住民票の住所は青森にあるけど、実態は東京で生活しているケース。
このケースの場合には東京で生活している実態を説明すれば自宅と判断してくれます。
説明方法は後ほど解説をしていきます。
ケース3 実態は青森に住んでいるけど住民票だけ東京にして特例適用する…NG!
実態は青森で生活しているけど、東京の不動産を売却するから東京に住民票の住所にしているケース。
たとえ住民票が東京にあったとしても、東京が『生活の拠点』ではないので『自宅』としてはみてくれません。
どうせ、税務署にはバレないでしょ、、、
、、と思っているかた、税務署の情報力をあなどると痛い目に合いますので気をつけましょう。
住民票が別のところにあるときの説明方法
住民票で『自宅』であることを説明できない場合、別の書類を使って『生活の拠点』であったこと説明する必要があります。
その説明方法について解説していきます。
、、といっても実は特別なテクニックはありません。ていねいに説明していくしかありません。
説明するときのポイントは以下↓の2点です。
- 自分(や家族)がそこで生活していたことを示す資料を提示すること
- 資料は多ければ多いほど好ましい
とくに法律で〇〇の書類があればOK、○○の書類がないとNG、、ということは決まっていません。
極端な話、書類がなくてもしっかり説明できればOKです。
【余談】とはいっても税務署も口頭だけではOKしづらい。
実は、税務調査は現場の調査官の判断だけでは終わりません。
現場での調査結果を税務署内の調査審理官がチェックします。
現場の調査官も調査審理官に説明する資料を提示できたほうが
調査をスムーズに終わらせることができ調査官からも喜ばれます。
以下では説明に使う資料の一例を紹介します。
電気、ガス、水道などのライフラインの使用量の資料
生活には電気、ガス、水道などのライフラインが欠かせませんよね。
これらの使用量の資料を提示することで生活の実態を証明することができます。
ライフラインの資料を提示することで以下↓の5つを説明することができるため説明資料として一番すぐれています。
- 使用していた場所
- 使用していた人
- ライフラインを使った日
- ライフラインの使用量
- 支払ったことの証明
領収書だけだと使用場所の記載がない場合もあるため、使用量のお知らせ↓も合わせて取っておくほうが好ましいでしょう。
捨ててしまった方は領収書や使用状況の再発行を検討してみましょう。
居住地の資料だけではなく、もう一つの物件の資料も取っておく
住民票は青森。でも実態は東京に生活しているケース2の場合。
東京で生活していたら青森の電気、ガス、水道の使用量は少ないはずです。
東京のライフラインの資料だけではなく、青森のライフラインの資料もとっておくと
より説得力が増します。
資料を捨ててしまえばバレないでしょ、、、はNG!
住民票は東京。でも実態は青森に住んでいるケース3の場合。
この状態で東京の不動産を売却した場合、東京は形式だけの自宅なので適用はNGとなります。
この話をすると、たまにこんなこと↓を耳にします
住民票が東京にあればOKでしょう。青森に住んでいることなんて分からないでしょ。
ライフラインの資料?そんなの捨ててしまえばバレない、バレない、、、。
⇒バレます!
税務署の情報力、調査能力をあなどってはいけません。
調査をするときには電気、ガス、水道の提供先へ反面調査をすることで使用量の実態を確認します。
領収書を捨てても意味はありません。
形式上はごまかせても、実態をごまかすことは非常に難しいことなのです。
届いた郵送物
コロナ禍もあり今はオンラインでの買い物が主流になりましたよね。
生活をしていると、インターネット通販で購入したものやクレジットカードの利用明細、さまざまなところから郵送物が届きます。
これらの郵送物を提示することでそこで生活していたことを説明することができます。
医療費の領収書
病院にいくときには生活しているところの近くの病院に行きますよね。
東京で生活している人がわざわざ青森の病院に行くことは現実的にないでしょう。医療費の領収書を提示することでその病院の近くで生活していたことを説明することができます。
通勤、通学定期
通勤や通学は生活に欠かせないものですよね。
通勤や通学に使っている定期を提示することで生活していた場所を説明することができます。
『資料は多ければ多いほど好ましい』の原則を忘れない
住民票以外で生活を説明する資料の一例を紹介しました。
書類としてはむずかしいものではないと思います。
日々の生活のなかで自然と出てくる書類こそ『生活の拠点』であったことを説明する良い資料となります。
1があれば2はいらない、ということではなく、資料は多ければ多いほど好ましいです。
集められるものは集めておいて説明にそなえましょう。
上記であげたもの以外でも生活していたことを説明できればOKです。
まとめ
今回は住民票以外で自宅を説明する方法について説明しました。
税務上は住民票などの形式ではなく、生活の拠点がどこにあったのか、という実態で判断します。
住民票の住所と実態が一致していない場合には、以下の資料をもちいて税務署に自宅であることを説明していきましょう。
住民票以外で『自宅』であることを説明する方法
- ライフラインの使用量の資料
- 届いた郵送物
- 医療費の領収書
- 通勤、通学定期
でも、、説明したり、資料集めたり、色々メンドウですよね。。
できれば、住民票と実態は合わせたほうがラクです。
とはいっても、住民票だけかえておけばいいんでしょ、、、はNGです。
税務署は反面調査や周辺住民の聞き込みなどでそこに生活の拠点があったかどうか徹底的に調べます。
税務署の情報力をあなどらないようにしましょう。
今回のケースは東京と青森での事例で説明しましたが実際には、近いエリア(たとえば同じ東京)に複数の不動産を持っている場合もあると思います。
近いエリアで所有している場合、どちらの家が自宅(『生活の拠点』)だったかを判断するのは税務上、非常に難しいです。
そのような不動産をお持ちの場合には売却前にご相談されることをおすすめします。
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