相続税の対象となる財産が基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))を超える場合、相続税の申告が必要です。
申告の有無を判断するためには相続税の対象となる財産について理解する必要があります。
相続税がかかるのは被相続人が所有している財産だけではありません!
今回は相続税がかかる財産についてお話しします。
相続発生日時点で所有している財産
相続税は財産に対する税金です。被相続人が相続開始の時において所有していた財産に相続税がかかります。
財産の範囲は広く、金銭に見積もることができるすべてのものに相続税がかかります。
相続税がかかる財産の具体例
①金融資産
- 現金(タンス預金など)
- 預貯金
- 有価証券、未収配当金
- 被相続人が契約者の生命保険契約(被保険者が被相続人以外のもの)
最近はネット銀行・証券会社など口座の把握がしづらいものが増えています。
送付物やPC、メールの履歴などから口座を把握しましょう。
被相続人が契約者となり、他人を被保険者として加入していた生命保険契約も金融資産として相続税がかかります。
保険会社に確認し相続発生日時点の解約返戻金相当額を調べましょう。
②不動産
- 土地
- 借地権
- 家屋
不動産にも相続税がかかります。
不動産は金融資産と異なり金銭に見積もることが難しい財産です。
相続税を計算するときには路線価もしくは固定資産税評価額を用いて計算します。
土地を借りている場合にも借地権として相続税がかかります。
なお、建物を賃貸している場合の借家権については、「この権利が権利金等の名称をもって取引される慣行のない地域にあるものについては、評価しない。」とされています。
③事業用財産
- 事業用財産
- 特許権
- 著作権
- 売掛金、未収家賃
個人事業主として事業を行っているときに使っていた財産も課税対象となります。
特許権や著作権は死後も権利が存続するため一定の金額が課税対象となります。
売掛金、未収家賃などの相続発生日時点で未入金の売上金も課税対象となります。
④その他
- 家庭用財産
- 自動車
- 書画・骨とう品
- 貸付金
プライベートで使っている財産にも相続税がかかります。金銭に見積もれるものがないか確認しましょう。
プライベートな関係での貸付金にも相続税がかかります。誰に、いくら貸しているのか整理する必要があります。
負の財産は相続税からマイナスする
- 借入金
- クレジットカードの支払いなどの未払金
- お寺などへの支払
- 葬儀社、タクシー会社などへの支払、
- お通夜に要した費用など
なお、墓地や墓碑などの購入費用、香典返しの費用や法要に要した費用などは、葬式費用に含まれません
借入金や未払金などの負の財産は相続財産の価額からマイナスすることができます。
被相続人の葬式に際してかかった費用もマイナスすることができます。
全世界の財産が対象
被相続人と相続人、どちらかが日本に住んでいる場合には、国内にある財産だけではなく国外の財産にも相続税がかかります。
たとえば、日本に住んでいる日本人がアメリカに土地を持っていた場合にはそのアメリカの土地にも日本の相続税がかかります。
不動産、預金、有価証券など海外に財産を持っている場合には気をつけましょう。
家族名義も対象になる可能性あり!
被相続人以外の家族名義の財産にも相続税がかかる可能性があります。
相続税を計算するときには『名義』にかかわらず被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税がかかります。
預貯金、有価証券、生命保険、自動車などが該当しがちです。
取得時に資金の流れを整理しながら検討しましょう。
家族名義の財産の帰属については以下の記事で詳細を解説しています。
死亡保険金、退職手当金
死亡保険金や退職手当金などは相続発生日時点で被相続人が所有している財産ではありませんが、相続により取得したものとみなされ相続税がかかります。
死亡保険金等
被相続人が被保険者になっている生命保険については死亡にともない生命保険金が支払われます。この生命保険金に相続税がかかることになります。
ただし、被相続人が保険料負担をしていたものにかぎられ、被相続人以外の人が保険料を負担していた場合には相続税はかかりません。
(ただし、一時所得として所得税が課税されます。)
なお、相続人が受け取った死亡保険金については500万円×法定相続人の数が非課税となります。
生命保険に対する税金については以下の記事で詳細を解説しています。
死亡退職金等
死亡にともない支払われる退職金、功労金、退職給付金に対して相続税がかかります。
退職手当金にも非課税規定があり、相続人が受け取った退職金については500万円×法定相続人の数が非課税となります。
過去の生前贈与
生前に被相続人が相続人などに贈与していた財産にたいしても相続税がかかることがあります。
生前贈与の方式によりかかる財産の範囲が異なります。
以下でパターンごとに説明します。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は高齢世代から若年層への財産移転を促進する目的のために平成15年にできた制度です。
累計2,500万円までの贈与であれば、特別控除により贈与税はかからないため多額の財産を相続前に贈与したい場合に活用されます。
相続時精算課税とは『相続時』に『精算』して『課税』する制度のため、生前贈与した財産を相続財産と考えて相続税を課税します。
相続や遺贈により財産をもらっていない場合でも相続税がかかります。
相続財産として取り込まれる財産の価格は『贈与時』の価格となります。過去の贈与税の申告書の控えで金額を確認しましょう。
過去の贈与税が見当たらない場合には、税務署に対して閲覧請求をする必要があります。以下の記事で手続き方法について解説しています。
暦年課税制度
相続時精算課税制度の適用を受けていない通常の贈与を暦年課税制度といいます。
暦年課税の生前贈与については、相続開始前3年以内に被相続人から贈与によって取得した財産に相続税がかかります。
ただし、相続開始前3年以内におしどり贈与(贈与税の配偶者控除)の適用を受けた贈与財産に対しては相続税がかかりません。
おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)とは婚姻期間が20年以上の夫婦であれば自宅を2000万円まで無税で生前贈与することができる制度です。
詳細についてはこちらの記事を参考にしてください。
贈与税の非課税特例
贈与税には贈与された資金を一定の用途に使うのであれば贈与金額の一部が非課税になる規定があります。
贈与税の非課税規定を受けたものには基本的に相続税がかかりませんが、制度によって相続税がかかる場合があります。
贈与税の非課税の規定を受けたからといって安心していると思わぬ形で足元をすくわれますので気をつけましょう。
贈与税の3つの特例については以下の記事でも解説しています。
住宅資金贈与
両親、祖父母などの直系尊属から住宅購入のために生前贈与を受けると一定額まで贈与税が非課税となる規定があります。
住宅取得等資金贈与の特例は制度適用年により相続税のかかり方が異なります。
平成21年1月1日以降に被相続人から贈与により住宅取得等資金を取得し直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(租税特別措置法第70条の2)の適用を受けた金額については相続税はかかりません。
ただし、平成21年12月31日までの贈与で相続時精算課税制度の特別控除の上乗せ特例を使用している場合には相続税がかかります。
両親、祖父母から住宅資金贈与を受けたことがある場合には、過去の贈与税の申告書で特例適用年度をしっかり確認しましょう。
- 住宅取得等資金贈与の特例の適用を受けるために贈与したけど、贈与税の申告をする前に贈与者が死亡してしまいました。
この場合、どうなりますか? -
安心してください、相続税はかかりません。ただし、贈与税の申告は必要になるので忘れずに!
生前贈与をした年に贈与者が亡くなってしまうと相続発生日時点では贈与税の非課税の規定を受けていないことなります。
このような場合でも、通常通り贈与税の申告をして非課税の規定の適用を受ければ、相続税はかかりません。
住宅資金贈与だけではなく、おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)も同じです。
慌てずに贈与税の申告を忘れないようにしましょう。
教育資金の一括贈与
教育資金の一括贈与とは将来使う教育資金を一括で贈与しても受贈者が30歳になるまえに使い切れば一定の金額が非課税となる制度です。
ただし、使い切る前に贈与者が死亡した場合には口座に余っているお金(『管理残額』)に対して相続税がかかることがあります。
この『管理残額』については制度創設から改正が何度かあり、以下のとおり口座への拠出時期により取り扱いが異なっています。
拠出時期 | 相続税 |
---|---|
まで | H31年3月31日かからない |
から R3年3月31日 まで | H31年4月1日拠出分に限り かかる | 死亡前3年以内の
以降 | R3年4月1日かかる |
R3年4月1日以降は原則的に相続税がかかります。
ただし、 受贈者が贈与者の死亡日において、以下のケースのいずれかに該当する場合には相続税がかかりません。
- 23歳未満である場合
- 学校等に在学している場合
- 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合
結婚・子育て資金の一括贈与
結婚・子育て資金の一括贈与とは将来使う結婚・子育て資金を一括で贈与しても50歳になるまでに使い切れば一定の金額が非課税となる制度です。
ただし、使い切る前に贈与者が死亡した場合には口座に余っているお金(『管理残額』)に対して相続税がかかります。
まとめ
相続税がかかる財産についてお話しました。
↓の財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))を超える場合、相続税申告が必要となります。
今回の記事を参考にして相続税申告が必要かどうか確認しましょう。
- 相続発生日時点で所有している財産
・全世界の財産が対象!
・家族名義の財産にも要注意! - 死亡保険金、退職手当金
- 過去の生前贈与
制度によって対象が異なる
過去の贈与税の申告書をチェック!
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